介護支援専門員(ケアマネジャー)不要論と国家資格化の関係~さらに有料化でどうなる?

介護支援専門員(ケアマネジャー)の自己負担徴収が叫ばれている中、このケアマネジャーという仕事が今後どのような道を進んでいくのか考えてみたいと思います。

介護保険制度の見直しにおいて、有料化の検討が進められていることについてはみなさんもご承知の通りです。未だに不要論も根強くありますし、国家資格化もどうなるのか気になるところでしょう。

ケアプランが有料になるとどうなるのか、ケアマネジャーという仕事が今後も続いていくのか、述べていきたいと思います。

ケアマネジャー不要論と国家資格化はこのように関係している

ケアマネジャーの廃止論に対しては、介護支援専門員協会も反対署名を提出するなどの行動に出るだけではなく、今後生き残っていくための術を探っています。

それが「国家資格化」です。

少し話はさかのぼるのですが、そもそもケアマネジャー廃止論が始まったのは厚生労働省内において。厚生労働省の考えるケアマネジャーの姿には程遠く、その期待に追いついていない実態があるからです。

もちろん協会としても研修時間を増やしたり、主任介護支援専門員資格の創設などによりケアマネジャー資質の向上を目指してきたのは言うまでもありません。

しかしそれだけでは抜本的な解決策とはなっていないのは明らかです。

そこでケアマネジャーが生き残っていくために、「国家資格化」が協会にとっては必要だと考えました。ケアマネジャーという資格を存続させ、優秀な人材を確保し、ケアマネジャーの質を担保するためには国家資格化が必要なのです。

協会によりケアマネ国家資格を取得するイメージを提示されていますが、このなかに現任のケアマネジャーに対する扱いも述べられています。

現任のケアマネジャーについては、国家試験の受験が必要であることを示し、受験資格として「一定期間・程度の実務経験等」を要件としています。要するに現任のケアマネであっても国家試験合格が義務付け、さらには要件により受験できないケアマネも出てくるという事なのです。

これは何を示しているかというと、「ふるいを掛ける」という事にほかなりません。

優秀でやる気のある人材を業界に残しておくことで、ケアマネの質の向上を目指すといったことに繋がります。この現任に対する国家試験受験に対しては、協会のよっぽどの想いを感じずにはいられません。

そんな中、現任のケアマネからは落胆の意見も多く、
「国家試験になって何が変わるのか」
「これ以上の重い責任を負わせようとしているのか」
「ケアマネのなり手がいなくなるのでは」
「介護保険制度に無理があるのでは」
という声が多く聞こえてきます。

その反面、
「待遇改善に繋がるのであれば」
「質の向上に繋がるので賛成」
といった賛成意見もあります。どちらの意見も納得がいく意見が多いです。

廃止するか国家試験となるかについてはどうなるかはわかりません。

しかしケアマネ試験はどんどん難関になっていく事は間違いないでしょう。ハードルが高くなるにつれて、ケアマネを目指す人も少なくなるに違いありません。

ケアプランははたして有料になるのか!?

以前から議論となっている「居宅介護支援での自己負担徴収」。

2018年度に行われた介護保険制度の見直しにおいては、「検討を進めている」ということだけで、実際の運用には踏み込みませんでした。

ケアプラン有料化の効果:介護保険費用の抑制効果

そもそもこのケアプランの有料化については増大する介護保険費用の抑制のために行う施策のひとつです。

どれぐらいの抑制効果があるかと言いますと、厚生労働省が発表している「介護給付費実態調査」によりますと、居宅介護支援での支出は2014年で4000億円超ですので、単純計算でその一割にあたる400億円を減らす効果があることがわかります。

介護給付費は年々増大していることは、高齢化が進んでいることを考えると推測できるのではないかと思うのですが、国の財源には限度がありますので何とか抑制したいと考えるのは当然の流れです。

有料化に対する日本介護支援専門員協会の本音

この流れに対して日本介護支援専門員協会は絶対反対の立場です。

日本介護支援専門員協会の鷲見よしみ会長は、日本介護支援専門員協会全国大会in千葉 2日目においてこのようにコメントされています。

「介護ではケアマネジメントがとても大事で、それを誰もが受けられるようにという趣旨で10割給付になっているわけですよね。そもそも。それを財源が必要だからと言って変えるという話に、ケアマネジャーが賛成することはあり得ないですよ」

「自己負担を導入したら現場でどんなことが起きるのか、そのことを最もよく知っているのがケアマネです。これから課題をきちんと整理して現実を伝えていきたい」

社会保障審議会・介護給付費分科会での鷲見会長のコメントでは、

「もちろん反対。このことは真剣に議論していきたい」

「こうした場での具体的な検討がまだ始まっていないなかで、すでにケアプランの自己負担導入を実施するんだというような記事が出ている。これは現場を混乱させるだけでなく、利用者・国民の不安を煽ることにつながる」

と不快感を示されています。

ただし、社保審・介護保険部会の中で、全国老人福祉施設協議会の桝田和平経営委員長は、次のように述べています。

「1割負担、2割負担といった方法ではなく、例えば月額500円など定額制の方が望ましいのではないか」

と有料化に賛成する意見を述べていることに注目しておく必要があります。

介護保険制度改正を議論する社保審・介護保険部会での意見

ここでは賛否両論が出ています。

【反対派】

  • 介護保険の根幹であるケアマネジャーによるケアプランの作成に自己負担の導入を行うことは制度の根幹を揺るがすことになる。
  • 自己負担が導入によりケアマネジャー離れが起こり、適切なサービスの提供や利用ができなくなる。
  • 御用聞きのケアマネジャーが多くなる。
  • 無理難題を押し付けてくる利用者が増えてくる。
  • 低所得者に対して専門的なケアマネジメントの機会が減少する。

【賛成派】

  • やむを得ない。
  • 利用者自身がケアプラン内容に関心を高めることで自立支援が促進されるのでは。
  • ケアマネジャーの質が高まるのでは

そもそも居宅介護支援(ケアマネジメント)とは何なのか

ケアマネジャーが行う居宅介護支援(ケアマネジメント)は高い専門性がある業務になります。以下の流れで行われます。

  • アセスメント(利用者の情報収集)
  • ケアプラン作成(必要な介護サービスの調整、今後の目標の設定)
  • 介護の実施(実際に介護サービスを受けて頂く)
  • 評価(介護サービスを受けてみてどうか。生活や満足度を調査)

上記の流れが居宅介護支援(ケアマネジメント)です。この流れは延々と続くことになり、利用者の状況に応じて都度この流れが実施されます。

先ほども申しましたとおりケアマネジメントについては高い専門性が必要になります。これを利用者自身で行うことが可能ではありますが、現状では9割以上の方がケアマネジャーからケアマネジメントを受けておられる現状があります。

利用者自身でケアプランを立てるケース(セルフケアプラン)が増えれば・・・

仮にケアプラン有料化となった場合に、様々な理由で利用者自身が介護計画を立てることになるとしたら、この専門的な業務を行うことになりますので大変なことであることが解ると思います。

間違いなく行政や地域包括支援センターなどの協力がないことには成り立たないことは間違いありません。

恐らく現状においても利用者自身でのセルフケアプランについては、誰かの協力を得ておられるパターンが多いのではないかと推測します。

もしもセルフケアプランが増えるとしたら行政や関係機関の負担が増えることになるでしょう。しかし現状においてもこのサポート体制は万全とはいえませんので、この体制づくりも同時に必要になります。

莫大に増えることはないかもしれませんが、現状より増えることは間違いありません。

「セルフプラン作成業者」が出現するのでは、という意見もあります。

さらにセルフプランが増えると、介護サービス事業所がプラン作成をサポートして、特定の事業者によって利用者を囲ってしまうという事も懸念されています。

最後に~今後のケアマネジャーに求められる人物像は・・・

ケアマネジャーの近い将来を考えてみました。

上記を総合的に考えてみれば、すぐにケアマネジャー事態がなくなるものではありません。また有料化になったとしても、一概にセルフケアプランが莫大に増えることはないでしょう。

ですがそれ以上に大事であることは、無料が有料になることで利用者の意識も変化することに繋がるだろうということです。

有料になるということは、その価値について問われることになります。ですので能力の低いケアマネについては「御用聞きケアマネ」となっていくかもしれませんし、能力の高いケアマネにおいても、今以上に高いケアマネジメント能力を利用者や関係機関に意思表示していく必要があります。

「ケアマネジメント」が自立支援のために存在しているということを、どの利用者に対しても示していくということはかなりハードな業務とならざるを得ないでしょう。

いずれにしてもこのケアプラン有料化はケアマネジャーの報酬増加に繋がる話ではありません。
いま現任のケアマネジャーができることは、ケアマネジャーとしての力量を磨いていくしかないのではないでしょうか。

 

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